予防補綴という言葉は、一般の人にはあまり知られていない言葉なのかもしれません。しかし、日本の中高年の方々にスポットをあてると、すでに虫歯や歯周病に罹患し、その結果多くの歯を失っているか、近い将来失うであろうことが予測される状態にあるケースがほとんどです。その場合には、全面的に介入し咬合の再構築をすることがとても重要です。逆にこの時、消極的な治療をおこなってしまうと、せっかく残っている歯にストレスを集中させてしまい、最終的には歯が徐々に抜けてしまうという状態になりかねません。時として、最大限に介入し(Maximal Intervention)、全ての歯を固定することにより、入れ歯で歯の喪失を予防するような方法、つまり予防補綴的な治療が必要なのです。
テレスコープシステムとは、歯科治療先進国であるドイツで開発された精密で長持ちする部分入れ歯のことです。保険の部分入れ歯と違い、維持装置に金属のバネを使用せず、「はめこみ式」の装置を使った入れ歯となります。入れ歯を装着することで歯が抜けやすくなってしまうのではなく、入れ歯で歯が抜けることを予防する!というコンセプトのもと開発された入れ歯です。
つまりテレスコープシステムをおこなうことにより、歯を失うことを予防し、歯の寿命を延長することができるのです。また、通常の入れ歯だと必須な合わなかったり壊れたりした場合の作り直し作業も必要ありません。この入れ歯は、一度製作すれば修理しながらずっと使うことが可能です。その他にも長期間の使用に耐えれる、審美的である、歯の固定効果がある、清掃性が良いなど、歯を失う事を予防できる「予防補綴」には最適なものばかりです。ここでは、テレスコープシステムのメリットとデメリットについて少し解説させて頂きます。
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国際歯科連盟(FDI)では2000年にMinimal Intervention(最少の侵襲)という新しい概念を提唱しました。
この考えは限界まで歯を抜かない、切削しないという考えです。現在、歯科の分野においても予防という考え方が、徐々にではありますが患者さんに浸透してきました。若年者においては、一昔前ほどの口腔内が崩壊した症例は少なくなってきているように思われます。
しかし一方で中高年の多くは、上記に述べたように虫歯や歯槽膿漏に罹患している人も多いのが現実です。そのような場合には、最少の介入に固執するあまりすでに疾患に罹患している状態をただ静視し、歯の切削はまかりならぬとばかりに何もしないでいるとますます状況を悪化させてしまう結果になります。中高年においての咬合の崩壊が予想される場合には、積極的な咬合の回復と永続性のある歯の固定(Maximal Intervention)をおこなう必要があります。その為には歯の切削を行い、全顎的に歯の固定をおこなうと共に、咬合の安定を図り、長期的に口腔内で機能する補綴をおこなう必要があります。